Chef山本がビスコッティと出会ったのは、イタリアへ料理修業に渡った2003年の秋でした。
本や映像で見聞きするばかりのイタリア料理に、まさにその地で毎日没頭することへの喜びに満ち溢れていた、そんな時代でした。
フィレンツェで一番の老舗という店のビスコッティを知り、それを恐る恐る口にした時の感想は今でもはっきりと覚えています。
『自分だったらもっと美味しく作れる。作ってみせる!!』
若気の至りともいえる感想でした。しかし、もっと美味しくなるイメージは当時からあったのだと思います。ただ、その時は技術がそれに伴っていませんでした。
この体験をきっかけに、とりあえずイタリアの地でビスコッティに出会う度、片っ端からビスコッティを試食するというライフワークができました。
「これも違う・・・。」
「これでもない・・・。」
「おかしい。絶対どこかに納得するビスコッティがあるはずだ。」
そうして行きついたのはフィレンツェにある一軒のパン屋さん。
ここに自分のイメージを具現化するヒントがあったのです。
当時はまだ日本人がフィレンツェで働くことが珍しい時代、研修として手伝わせてくれることを快諾してくれたその店のオーナーの下、私は大きな大きな経験を培うことができました。
帰国後、料理にとしての務めを続けながら周りの人へ、機会があるたびにビスコッティを焼いては贈っていました。
そうする中でだんだんと、オリジナルと言える「自分の味」が形作られていったのです。
「世の中にお出ししてもいいのではないか?」と思えるようになった時には、イタリアから帰国してすでに4年の月日が経過しておりました。
今でももちろん、進化の歩みは止めておりません。
「ビスコッティといえばBinasce!!」と言っていただける様、日々努力してまいりたいと思っております。