2023/11/12
ビスコッティ屋としての今の私の “イタリアの恩人”の一人・ダヴィデのことを紹介させてください。
15年前、美味しいビスコッティを求めて彷徨っていた私は、住んでいた部屋の近くの一軒のパン屋と出合います。表にはっきりとした店名はなくて、「FORNO(フォルノ)」つまり「オーブン」とだけサインがある、とても地味な構えのパン屋でした。日本でいうと「焼いてます」とだけ掲げているようなイメージでしょうか。
お客さんが4~5人も入ったら一杯のようなスペースでも、壁やショーケースにはたくさんのパンが。最初は何を買ったのかなぁ、なによりシンプルなパンが、とにかく「あれ、美味しい」という魅力を持っていたのです。
びっくりするような美味しさ、というよりは「あれ、ちょっとまって、ここのは、なんか美味しいぞ」とボディに響くような味わいという表現が近いと思います。
そのショーケースの一角には量り売りのビスコッティがありました。当然買うのですが、さほどの期待はしていなかったと思います。まさかそのビスコッティが自分の人生に多大な影響をもたらすとは思ってもいませんでした(笑)。縁とはどこに転がっていてどうぶつかるか、わかりませんね。
「ああ。このビスコッティには可能性がある」と思った私。そうなると、性分というか悪い癖というか、当然通うようになるわけです。そして「これを自分のものにしたくなっちゃう。ここで働きたくなっちゃう」んですね(笑×2)。
ある日、意を決してお店にお願いに伺いました。
「あのー、、ここのパンとお菓子が勉強したくて、、手伝わせてもらえないかな、、?」
すると、「ダヴィデ!なんかこの子勉強したいんだって!ちょっと来て!」と裏に声がかかり、出てきたのが「(めちゃかっこいいやん!)」と思わずのけぞりそうになるダヴィデだったのでした。
「おおマジか。えーと、、そしたら夜中0時にまた来なよ」と快く迎え入れてくれたのです。
パンにお菓子に、短い期間でしたがたくさんのことを学べたお店でした。
今ではなんと、市内に3店舗と拡大し、ドバイにも支店があるダヴィデのお店。私の “鼻は利いた”のですね。素晴らしい活躍にこちらも身が引き締まります。
そんな彼と再会できたのは、今回の旅の到着初日の午前のわずか30分。
ダヴィデはその日の昼にはドバイへ行かなければならず、私のフライトが遅れたら会えずじまいのぎりぎりのタイミングでした。それでも会うべきときは会えるものなのです。
明るい印象に改装したお店にはエスプレッソマシーンも入り、お客様が入れ代わり立ち代わりするさすがの混雑ぶり。そんな中でもお互いの再会をマシンガンのようなイタリア語で迎えてくれたのでした。
「シンヤにちょっと力を貸してほしいことがあるんだけど」と、ちょっと面白い(&真剣な)話も出来、またの再会を期してしばしのお別れ。
ダヴィデ、これからもよろしくね。